ザスパと時々栃木シティな日々

明治安田生命J2リーグ所属『ザスパクサツ群馬』と関東1部リーグ所属『栃木シティFC』をまったり応援するブログです!Twitterは@jacklope_13です。よろしくお願いします。

4点ビハインドで生まれた1ゴールの意味

得点がないまま迎えた後半ロスタイム。
左コーナーで松田悠祐が右足を振り抜く。
放たれたボールを福田周平が頭で捉えるも相手に弾かれる。
再びボールは浮き上がる。
浮き上がったのは一瞬だったけれど、いつでもゴールが決まる直前は妙にスローに感じられる。
頭でゴールに叩き込んだのはウーヴァのNo.10、内山俊彦
スタンドから歓声が湧き上がる。
ゴール裏から選手を讃えるその日一番のチャントが鳴り響く。
無言でガッツポーズをする人、拳を握り締める人もいる。
スタジアムDJが音割れしたスピーカーで叫ぶ。
幸せな瞬間。
例えそれが、すでに相手に4点先取されていた試合だったとしても。

3月13日、栃木市陸上競技場にてJFL1stステージ第2節、栃木ウーヴァFCvsヴァンラーレ八戸戦を観戦した。

序盤はお互いに出方を探り合うような立ち上がり。
しかし、徐々にヴァンラーレがサイド攻撃から流れを掴み、ウーヴァは防戦一方。
攻守の切り替えが早く(特に守から攻)、スピードある選手がよく走るヴァンラーレ。
ウーヴァは守備でも寄せが甘く、セカンドボールも拾われる。
DFラインがボールを回し、出しどころを伺うがパスコースはことごとく潰され、相手の脅威にならないポゼッションに終始。

そして、ついに前半23分。
右サイドから崩され、ヴァンラーレ11番、水谷侑暉に先制ゴールを奪われる。
ここぞのタイミングでパスを受けに来た水谷の動きは素晴らしかった。
さらに、前半28分。
ヴァンラーレ8番、菅井慎也のロングパスに反応し、抜け出した13番、村上聖弥に決められ2得点目。
前半の失点劇はこれだけでは終わらなかった。
前半38分。
菅井慎也のパスを右サイドで受けた水谷侑暉がそのままドリブルでペナルティエリア内に浸入。
放たれたシュートは不運にもウーヴァ選手に当たり、ゴールへと吸い込まれた。
反撃もままならぬまま前半は終了した。

前半だけで3失点。
選手は入れ替わっても、連続失点癖は変わらず、といったところか。
さらに、前半を終えてウーヴァが放ったシュート数はなんと0本。
はっきり言ってこの前半、ウーヴァサポーター、ファン、ウーヴァ寄りで見ていた観客にとって見所は皆無に等しい。
勝敗もミラクルが起きない限り決まったようなもの。
スタンドも諦めとも呆れともつかない空気が漂っていた。

後半、ウーヴァは2人の選手を入れ替え。
後半から登場となった27番、平井晋太郎により攻撃の起点ができ始めたウーヴァ。
しかし、試合は依然としてヴァンラーレが主導権を握る。
後半16分、ウーヴァ24番、石巻が相手選手を倒してしまいペナルティエリア付近でフリーキックを与えてしまう。
このフリーキックをヴァンラーレ10番、新井山が直接ゴール。
4点差。
ウーヴァ寄りの観客からも新井山のフリーキックに感心したような声が漏れる。
栃木にヴァンラーレファンを増やす目的でもあるのか?、と勘繰りたくなる程のやられっぷりだ。

それでも後半27分、ウーヴァにチャンスが訪れる。
ヴァンラーレ選手がペナルティエリア内でハンドを取られ、ウーヴァがPKを獲得。
キッカーはウーヴァの10番、内山俊彦
「これで1点は返せるか…。」多くの観客がそう思っただろう。
しかし、現実は非情である。
内山のゴール右サイドを狙ったシュートをヴァンラーレGK、山田賢二があっさり止める。
ヴァンラーレサポーターの歓声が、絶望に打ちひしがれるウーヴァサポーターに降り注ぐ。

やられっぱなしでは終われない。
ウーヴァはPK失敗を機に攻撃のギアを上げる。
サイドを起点に攻撃を構築。
ペナルティエリア付近で細かいパス交換で相手DFを崩しながらシュートを放つ。
ため息ばかりだったスタンドにも徐々にウーヴァへの声援が生まれた。
そして、ラストプレーかと思われたロスタイム。
冒頭のゴールシーンが生まれた。

試合は惨敗だ。
攻撃にも守備にも課題は山積している。
それでも、ウーヴァの選手達は最後に意地を見せ、観客の心を打つ場面を作り出した。
無論、スコア通りボロ負けで面白みのない試合だった、という見方のみの観客も多くいるだろう。
それは悪い事ではないし、そう見られて当然の結果である事は否定しようもない。
そもそも、個人的にサッカー観戦は娯楽であるべきと考えているので、楽しみを見出せなければ金と時間の無駄だ、と思われても仕方がない。
しかし、内山のゴールを決めた時の観客のリアクションは、決して冷めたものではなく熱を帯び、歓喜に満ちていた。
甘い考えかもしれないが、観客に喜びの感情を提供できたことは大きな収穫だと思う。
このゴールで得たものはいずれ実を結ぶ可能性を秘めている。
それは、今後の栃木ウーヴァFCというクラブ、チームの残す結果にかかっている。